大寒
季節の一冊、12/20は大寒でした。
一年で一番寒いこの季節に読みたいのは 皆川博子著『冬の旅人』
寒いからこそ、寒いところのお話を…ということで、舞台は極寒のロシア。
しっかりと暖房の効いた部屋で、毛布にくるまりながら読んでもなお、
吹き付ける風雪に耐えなければ、寒いけれど眼を開けなければ…
と一種寒さのゲシュタルト崩壊のような状態に陥りながらの読書が印象的な一冊。
ロシアへ渡った日本人女性の半生を描いた作品ですが、並の小説では味わえない壮大なお話です。
皆川さん独特のちょっと淫靡な雰囲気に加え、飢え、血、油絵具、金粉、雪、泥で窒息しそうになりながら、一ページずつ読み進める恍惚。
黄金のタイルのイコン画の光にのまれたような気分になるかと思えば、泥に足を取られてページが重くなったり、冷たく静かな雪に囲まれて自分の居場所が分からなくなったり……
主人公の成長に合わせて、読み手もすっぽりと、彼女の人生と時間の万華鏡のなかへ誘われます。
一度読み始めてしまうとその世界から抜け出せなくなるほど濃密な作品ですので
寒い日はこれを抱き込んで、一日家で…なんていう読書デーにもお勧めです。
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