2017.2さそり座さんへ贈る一冊

他人の善意に期待しない


そんなさそり座さんには


ポール・オースター著 最後の物たちの国で


他人の善意に期待しない、そういう国が世界のどこかにあり

そこに迷い込んだら、決して帰ることはできない。

そこでは、人々は奪い合い殺し合う。


オースターの描く冷たくて暗い、寒い世界は

たとえ暖房の効いた部屋であってもしんしんと骨身にしみてくる。

わたしが生活している、完全で欠陥のないように見えてる世界は

裏返して見ると、視点を変えて見ると、悲惨な穴だらけなんではないか。

あの冷たい国は、その小さな穴に嵌った人たちの物語であって

あくまでも現実と地続きであり

この世界は、歯車が一本欠けただけで、すぐその様相をがらりと変える不安要素をはらんでいるのかもしれない

しかし、そんな状況だからこと小さな愛や希望がことさらに美しく見える。

その美しさは、平常時では享受できない、あまりに美しいものなので

ついつい冷たい世界も悪くないと思ってしまう。



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